思い立ったが吉日 男の意地のぶつかり合い
真夜中筑波山“爆走”ツーリング 2回目!

2006年12月01-02日 金〜土曜日




馬鹿なことを馬鹿だと分かってやるのはちょっとカッコイイ・・・なんて、幻想だ。
馬鹿は馬鹿。
割り切ってても馬鹿。

12月1日、いつものごとくS氏とメールで取り留めのない話しをしていた。
つい最近、オレは教習所通いを始め、普通自動二輪の免許を取ろうと教習所で奮闘中である。
そんな状況なので、当然話題の多くはバイクのことになる。
話しの中で「今年は一回もツーリング行ってないですね」という話しになった。
S氏が言うには、それはオレのせいであり、遊びに来る根性がないからだと言う。

虐めだ。

そんなに言うのなら行ってやろうじゃないか。
このまま今年が終わってしまったら、「ドボさんのせいで2006年はツーリングに一回も行かなかったね」なんて何年もネチネチ言われ続けるに違いない。

職場から、「じゃ、今夜行きますか?」とメールし、家路に着いた。

帰宅すると、S氏から「まってるぜ」とのレスが。
グヌヌ・・・。
付き合い初めの恋人から「待ってる」なんてレスが来たら嬉しくてウキウキしてしまうが、コレは明らかに「挑発」だ。
「どうせ口だけで、また家に帰ったら理由をつけて来られないって言うんだろ」ってな悪意が裏に潜んでいる、そんな「まってるぜ」だ。
グヌヌ・・・。

こうなったらコッチも意地だ。とばかり、メールを返信。
「出発します。」と。


幸いにして、今日は娘がすでに寝ていた。
ニョウボと二人っきりの夕食を済ませ、ニョウボが入浴中に犬の世話をし、食器の後かたづけをして得点を稼いでおく。
つづけて出発の準備。
ズボン下を履き、ジーパンを履き、Tシャツの下にサーマルウエアを着込み、Tシャツ二枚にトレーナー、そしてホンダのライダース。
ついさっき通販で届いたヤマハのレインスーツを持っていくか悩んだが、もし寒かったら着ればいいやと思い、持っていくことにした。
風呂上がりのニョウボにそろそろ出発すると告げる。
ニョウボも丁度今夜は娘のズボンを作りたかったというので、オレの外出をあっさり承諾。
よし、これで後ろめたいことは何もない。

ニョ「で、どこ行くの?」
オレ「さぁ?」

相変わらず、馬鹿ね、と言う顔で見送られる。
教訓1「安定した家庭を守るために得点稼ぎは怠らないこと」

先日、オレはモンキーのマフラーを交換した。
そのときに嵌めるはずのネジを一個嵌め忘れ、排気が漏れている箇所があったので、ドライバーズスタンドへより、ネジを買う。
しかし普通のネジがなく、六角レンチを買うハメに。
無駄だ、家にあるのに!!
ドライバーズスタンドの駐車場でネジをしっかり締めた。
そして、ココに来るまでに寒くてしかたなかったので、早速ヤマハのレインウエアのパンツだけをはく。
いやもう、持ってきて正解。
つぅか、このときドライバーズスタンドに戻ってウインタージャケットにパンツを買うべきだった本当は。
まさかこの後、あんなに寒い思いをするなんて・・・。

準備を整え、6号線を北上し、一路S氏邸へ!

呼塚の交差点を越え、左折。
利根川大橋を渡り守谷へはいると、今までとはまったく気温が違っていた。
猛烈に寒い。
すでに激しく後悔。
何を好きこのんで12月の夜中にバイクで走ろうというのか! アホか!!




守谷のGSでガソリンをいれ、温かい缶コーヒーを飲み、冷え切った身体を暖める。
我慢の限界だったので、この時点で最大の装備となるレインウエアの上も着た。
防寒用ではないが、だいぶ温かい。
もって来てよかった。
コレがなかったら、今頃引き返していただろう。しかし先行きが不安だ。
あと30km以上も北上するのだから。





そこから約1時間、案の定S氏邸に付く頃には、オレの手足は冷え切り、かじかみ、身体は芯まで凍るようだった。
S氏邸のリビングで、彼の準備を待ちながら、しばらく暖を取り、回復を図る。
S氏が膝当てを貸してくれた。彼自身は革つなぎの上に革ジャンさらに上着と言う重装備。
教訓2「12月のつくばをナメてはいけない。寒さがハンパない。」


そしてエンジン音も高らかに、一路筑波山へ出発。

山につくまでの道は寒くてほとんど覚えていない。
グネグネとS氏のテールランプを追いかけ走っていく。
S氏邸のそばでは何台かの車が居たが、山に近づくと車どころかオレ達以外に誰もいない。

真っ暗な筑波山へ突入。
登り始めるとすぐに追いつけなくなる。
非力な50ccのマイモンキーにとって、体重70kgのオレを運ぶのは大変な仕事らしい。
3速全開で30km/hが限界。

S氏のテールランプが見えなくなると、とたんに闇が迫ってくる。
真っ暗な林の中の細い道、聞こえてくるのはモンキーのエンジン音とメットのバイザーをわずかに空けている隙間に差し込む風の音。
その音が不意に少女のささやく声のように聞こえ、ゾッとする。
「何も居ない、何も居ない」。
もっと速度が出ていれば景色なんか見えないのだが、30km/hでは周りの闇がよく見える。
ひ弱なモンキーのライトに照らされた林の奥に、何かが見えそうで怖い・・・。

そんな感じでフルスロットル、やっと少しだけ坂が緩やかになり、S氏の姿が見えてくる。
S氏は学者で現実主義だから、オレのように見えない何かの事は考えないのだろうか?
1人でもこんな闇の中を走るのだろうか?
なんて事を考えながら追走。





やがて、S氏が停車。
オレも横に停車。
「いや〜、寒いねぇ」
「そうですね。でも思ったほどでもないです。」
「そうだね、山の方が暖かいね」
「真っ暗だし、何もないし、間違って人を殺すことがあったらココに埋めに来ますワ」
「ワハハ・・・」
「いや〜、それにしてもここまで真っ暗だとなんか怖いですね。」
「怖いのはイノシシだよ。奴らに向かってこられたらどうやって逃げたらいいか・・・」
「イノシシ・・・それは怖い・・・」
暗闇の中で、そんな会話を交わし、再出発。

先行のS氏が巻き上げた枯れ葉がオレのモンキーのライトに照らし出され、闇の中で踊る。
ちょっとした映画のワンシーンのような、鮮烈な印象。
うん、箱根のワインディングとか(バイクで走ったこと無いけど)、良い季節のまともな時間だったらもっと良かったのにね、オレ。(w

また少し登ると、陸橋の下のような、開けた場所に出た。
前回もここで停まったことがあるなぁ、と思い、S氏のそばに停車。
「どうする?」と、S氏。
「え?」
「いや。もう登り切っちゃったから」
「・・・」
黙っていると、まぁいいか、という感じで再出発。


今度は下りだ。
S氏にも追いつける。
追いつけるんだけど臭い。
激しく臭い。
S氏のモンキーが吐き出す排ガスがものすんごく臭いのだ。
こんなの吸い続けてオレの身体は大丈夫だろうか?!と不安になる。
なので距離をあけるのだが、どうしてもまたすぐに追いついてしまう。
そして臭い・・・。

やがて下りきり、いったん市街地へ出た後、今度は違う入り口からまたのぼり。
今度も追いつけないかと思ったのだが、途中からS氏がスローダウン。
気まぐれな優しさか?と思ったのもつかの間、路面状態が悪く、低速走行を余儀なくされたのだ。

先ほどは美しく見えた木の葉が、道の上を覆い、そして水分を含み、溶け、まるで泥水か何かのようになっているのだ。
ちょっと気を抜くとリアが滑る。
それが楽しい。(w
こういうのは「ターマックだっけ?」「グラベル、はもっと乾いた土?」「ターマックって泥っぽい響きだもんな」なんて思いながら走る。
(帰宅してから調べたら、ターマックは「舗装路」という意味だった。真逆じゃん・・・)

前回も停まった見晴らしのいい場所に停車。
またもや案外寒くないね、などと短めの会話を交わし、再出発。



パラグライダーの滑走路まで移動。
街を見下ろし、明かりが多いことに驚くS氏。
地域住民に失礼です。
ここで初めて車と遭遇。パジェロミニかな? 怪しい奴・・・と思ったが、こっちの方がずっと怪しい。

そして、そろそろ降りて帰ろうと言うことになり、下り。
またS氏に追いついてしまう。
この道も枯れ葉が溶けてずるずる滑る。
S氏もリアのコントロールを失ったりしていた。後ろはその様子を見ながら走れるので楽チンだ。

なんて思っていると、前後交代。
「ゆっくり走って。危ないから」
「はぁ〜い」
なんつって出発。
先行は難しいけど、自分の好きなペースで走れるし、なにせ「怖いのが楽しい」のだから、後ろよりずっと楽しい。

しかし、走り出してすぐ明らかにオーバーペース。
「う、お、お、お、お、お、おぉぉ・・・・」
カーブで曲がりきれず、どんどん外に膨らんでしまう。
ブレーキも利かないので、足をついて減速。なんとか立て直す。

「うっひぃ〜。こわぁ〜〜〜!!!」なんて言いながら走りつづける。

いくつかの小さいカーブを極低速で抜け、少し長めのストレートから、左カーブ。
スピードが乗りすぎ、これがもう、ぜんぜん曲がらない・曲がれない・曲がろうとできない。
路面全面が濡れ枯れ葉。ヌルッヌルのブヨンブヨン。
意識はあるのだが、身体が硬直。
運転中、ブレーキをかけようと思い、実際にかけるまでの距離を空走距離というが、それとは違う。
何かしなくちゃいけないと思うんだけど、何をしたらいいか分からない、この時間。
空白時間、もしくは空洞距離。
左に曲がるのだから、左にぐいっと体重をかけてしまえばいいのだが、それができない。
この速度、この路面でそれをしたらダメっぽい、ということだけは本能的に分かる。
自転車だってコケるよ今そんなことしたら・・・そんな思いのまま、ブレーキもかけられず、頭は呆然、手も足もでない。
眼前に迫る暗い森。

このとき、モンキーの上でなにもできないオレは思った。

あぁ、怖いのは闇の中に潜む何かじゃなく、
そして冬眠前で殺気立ってるイノシシでもなくて、
この枯れ葉だ。
見えない霊より、現れないイノシシより、
全っ然、この枯れ葉の方がヤバいぃぃぃぃ!

ズボボボボ!!!!

エンブレもむなしく、そのまま減速しつつも道の外=林の中へ。
モンキーが林の樹に引っかかり、オレがモンキーに引っかかり・・・。
左カーブだったので、モンキーにまたがったまま右側を外(下)にして倒れたのだが、道の外は急斜面なのか、足をつく場所がない。
右足でどこを踏んでも手応えが無く、フニャっと地面が消えていく。
おそらくこれも降り積もった枯れ葉なのだろう。
S氏が駆け寄ってきて笑いながら、「バイクは保持してるから離して良いよ」と言う。
「・・・むぐぐ」答えられないオレ。
そんなこと言われてもぉ〜、右足がぁ、ぜんぜん〜、地面つかんでないんですぅ〜。と、さとう珠緒のように甘えたくなるのをぐっと我慢。
しかし、右足を踏み出せば出すほどキツイ体勢に。
「おいおい、どこへ行く気だ」とS氏が言う。
「いえ、足が引っかかって、その・・・あの・・・」
そのときのオレは図のような体勢だったのだ。



なんとか右足をつき、左足をモンキーからはずして、S氏にモンキーを引き上げてもらい、オレは自力ではい上がる。

「危ないですね〜」
「だから低速でって言ったのに」
「あはは〜(^^;」
教訓3「師匠より早く走れるわけがない事を知り、先行になったらゆっくり走ること」

つづく・・・>


<< Monkeyのトップへ戻る

<< INDEXページに戻る





Copyright (c)2003 dubo All rights reserved.



[PR]動画